初心者でも安心の着付け教室ガイド
両親や家族など、近しい方が亡くなった場合の葬儀には、洋装ではなく和装の黒喪服を着用するのが一般的です。告別式などでの黒の装いのほか、仏事での色喪服の略装など、和服での喪の装いについて簡単に解説していきましょう。
紋入りの黒喪服は悲しみの席での第一礼装。
通夜や告別式などで、喪主や家族、親族などが着用します。黒喪服には、羽二重か縮緬の黒生地を用い、五つ紋を付けるのが通例。
以前は、紅を染めてから黒を染める紅下染めが関西風、藍を染めてから黒を染める藍下染めが関東風、といった分け方がありましたが、現在は泥染めや草木染など、たくさんの染色法によって様々な雰囲気の黒生地が生産されています。
黒喪服には、名古屋帯の黒喪帯を一重太鼓で結び、帯揚げや帯締め、バッグや草履など、すべて黒の小物で統一します。
また、個人との関係や弔事の場面の違いによっては、黒ではなく色喪服がふさわしい場合があります。色喪服として適当なのは、グレーや暗い紫、藍色、渋い抹茶色など、ダークな色無地で、光沢のない縮緬のもの。生地の文様は流水など祝いの文様を避けた無難なものを選びます。紋を付けておくと格が上がり、慶事でもフォーマルな席に着用できますね。
黒喪服は、昔は嫁入り道具のひとつとして用意することが多かったのですが、最近では前もって準備している方が少なく、必要になった時にレンタルする人が増えているようです。
黒喪服には、その他の着物と同様に季節によって使い分けるルールがあり、10月から5月くらいまでは袷の仕立て、6月と7月は単衣、8月や9月の盛夏は絽の単衣仕立ての喪服を用いるのが正しいとされます。
また、不祝儀の場面や立場によって黒喪服と色喪服(略礼装)を使い分けることがあり、注意が必要。黒喪服と色喪服を使い分けるシチュエーションは、主に以下の通りになります。
喪服には“悲しみの気持ちを表す”と同時に、個人への敬意を表す意味が込められています。
ですから、通常時に黒喪服を誂えて準備しておくのは縁起が悪いと避けている人も多いですし、通夜の席に黒喪服と黒喪帯で出かけるとあらかじめ準備していたように思われるので、黒の装いを避ける方もいます。
不幸の知らせは突然来るものですから、通夜にはとりあえず駆けつけたという意味合いで地味な色無地に黒喪帯で出席し、告別式には黒喪服を整えて参列するわけです。
それでは、以下に黒喪服の着付けに必要な小物などをまとめてみましたので、参考にしてください。
着物など |
・黒喪服 ・黒喪帯 ・帯揚げ(黒) ・帯締め(黒) |
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下着類 |
・肌襦袢 ・裾避け ・足袋 ・補正用タオル |
着物の下に着るもの |
・肌襦袢 ・半衿 ・衿芯 |
小物類 |
・伊達締め2本 ・帯枕(黒のもの)1つ ・前板1枚 ・腰ひも4〜6本 |
その他小物 |
・草履(黒) ・バッグ(黒) |
あったら便利な小物 |
・コーリンベルト ・ウエストベルトなど |
用意する肌着はこんなもの
和装用の肌着は「肌襦袢(はだじゅばん)と裾除け」が正式な肌着です。できるだけ用意しておく必要がありますが、急な葬儀に出席しなければならない場合、用意することが難しい場合もあります。
そういった場合は所持している洋服を代用することで、肌襦袢や裾除けの代わりになるでしょう。
例として衿ぐりが大きめのTシャツやインナーを肌襦袢に、裾除けの場合は薄手のステテコやペチコートで代用することができます。
どちらしか用意できない、どちらも用意することができないなどのやむを得ない場合は、洋服のワンピースタイプの肌着でも代用することができます。
体型補正を行う
喪服を始め、着物を着用するのに最も好ましい体型は、凹凸の少ない円筒状な体型です。スタイルのよい女性や体格のふくよかな女性ですと、きちんと着こなせず悪目立ちする場合があるので、体型の補正を行う必要があります。
【体型補正を行う必要がある女性】
体型補正をするには、バスタオル・フェイスタオル・さらしが必要になります。白といったの目立たない色を選ぶようにしましょう。
また、それらを固定するために腰紐やサージカルテープ(包帯、ガーゼなどの医療用テープ)を使います。加えて必要なら適宜、衿下の調整も行います。※肌色によっては違う色を選んだほうがいい場合もあります。
【胴回り・お腹・お尻に補正が必要な人】
凹んでいる部分にタオルで厚みを持たせる、逆に出ている部分にはさらしを巻いて極力なだらかにするという工夫をしましょう。お尻回りも同様です。
【胸の大きさが目立つ人】
また胸元を強調しない目的で和装専用のブラジャーもあります。しかしそちらがご用意できない場合は、膨らみを抑えるデザインのスポーツブラでも代用できます。
【いかり肩の人】
衿のラインを美しく見せる必要があります。フェイスタオルを首の付け根にかけて厚みを持たせて自然ななで肩にするといった工夫を取り入れましょう。
喪服を着る際に、肌着の着用から完成までの一般的な手順を紹介します。
1.足袋をはく
半分を裏返し、折り返した箇所を持ってつま先を入れると履きやすくなります。二股に分かれた短いほうへ親指を入れ、もう一方に他の四本の指を入れましょう。
2.肌着を着用する
前述した肌襦袢と裾除けを着用します。慣れていない場合は、裾除けを始めに着用したほうがよいでしょう。
【裾除け】
【肌襦袢】
3.体型補正をする
茶筒の体型になるように自分の体型に合わせた補正を適宜行ってください。
4.着物を着る
※喪服の種類や着付けの流派によって、最適な着用方法は異なります。
5.帯を締める
おはしょりを整え、伊達締めを締めたら全体チェック
6.完成
ここまでで問題がなければ喪服の着付けは完成です。
最後に注意すること
喪服を着る際は華美な装飾は控えるのと同様に、髪型や化粧も控えめにしておいものが好ましいとされています。あまりに派手な恰好をすると、マナー違反になってしまいます。
普段の女性の髪型は様々ですが、葬儀の場は故人の死を悼む場です。したがって、派手な印象を与えないことが大切です。ここでは、髪の長さ別で注意点を見ていきます。
短い髪型の場合
内巻きやブローなどで、まとまった上品な印象を与える髪型にしておくと好印象です。
前髪が長く、お辞儀の動作で邪魔になるようならピンどめをして表情が隠れづらいようにしましょう。髪留めは、黒を基調とした目立たないものを選ぶとよいです。
長い髪型の場合
普段長い髪型をしている人はゴムでまとめるのが簡単な方法です。
少し上品に見せたい場合はアップスタイルで髪をまとめておくとよりコンパクトにできます。
パーマやくせ毛などボリュームのある髪質をしている場合は、アイロンでストレートにしておくことをおすすめします。
髪型をセットする際の注意点
髪の長さを問わず、髪をまとめるのは耳より下の位置にしておきましょう。高い位置でまとめるのは慶事の場が一般的で葬儀といった弔事ではふさわしくありません。
香りがきついワックスやヘアスプレーを控えるべき※見た目だけではなく香りにもエチケットがあります。特に弔事の場では注意しましょう。
喪服の女性がする薄化粧のことを、片化粧といいます。弔事の参列者にふさわしい化粧を指します。
片化粧は身だしなみであってオシャレではないのでエチケットの範疇を逸脱するのような華美な化粧はご法度です。
これらの点に注意しておきましょう。
髪の色はどうする?
葬儀に参加するなら、髪の色は自然な黒髪がベストです。しかし、葬儀のお知らせはいつ来るかわからないため、髪を黒染めする余裕がない場合もあります。また、自宅で黒染めした髪は自然な黒髪とは色が異なり、悪目立ちする可能性もあるため注意が必要です。
現在では髪を染めている人は珍しくないので、普段から茶髪の人であれば、わざわざ黒染めする必要はありません。明るい髪色が気になるのであれば、ダークブラウンのような暗い色に染め直すとよいでしょう。(赤や金色などの度を超えた派手な髪色であれば、黒染めをしたほうが無難です)
ネイルはどうする?
派手なネイルはお葬式の場にふさわしくありません。できればネイルオフをして、自然な状態に戻す必要があります。
しかし、自分でネイルを剥がす場合、爪トラブルが起こりやすいため、できればネイルオフを避けたいと考える人もいるでしょう。また、ネイルサロンで高いお金をかけたネイルですと、簡単にオフしてしまうのも惜しいと思えるものです。
この場合の対処法は2つあります。黒いレースの手袋でネイルを隠す方法、淡いピンク・ベージュなどの目立ちにくいネイルポリッシュを上から塗るという方法があります。
告別式に参列する場合、鞄や傘のような持ち物は、目立ちにくい黒を基調にしたもので統一しましょう。
腕時計やアクセサリー類は外しておくのが無難です。さらに、式中で着用するのもなるべく避け、アクセサリーも結婚指輪程度にしておくとよいでしょう。
2連のパールのアクセサリーは「不幸が重なる」という連想をさせてしまうため弔事ではタブーです。
喪服と合わせる場合、婦人下駄や草履が主流です。
なるべく光沢の入ったもの目立つので避けたほうがよいですし、下駄は歩いた際の足音が大きいものも避けましょう。履き物を選ぶ際にはこれらの点に気をつけてください。
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